何や、このおっさん!気持ち悪いなと思ってたら
自分が、懲罰明けで、洋裁工場に配役された時、雑居房(6人)に坂上さんと言う方ががいました。
年は55歳くらいでしょうか、自分は30歳くらいの時のことです。

その坂上さん、いつも一人でブツブツ言っては「うんうんうん」って言うてる人で、同房の堀之内さんが、「あんまり相手せんで良いよ。ちょっと頭おかしいから」と教えてくれました。
ある日、坂上さんが「黒澤さん、掃除はワシがやるから、気にせんといてな」と言ってきて、
「あ、お願いします」とゆう会話をしました。

坂上さん、相変わらず、一人で、ブツブツ言っては、「うんうんうん」の繰り返しで、気持ち悪いので、みんなから本当に嫌われていました。自分もその一人で、誰も坂上さんとは話をしません。
ある日のこと、自分が手紙を書いていた時の事です。 たまにボールペンのインクが出ない時ってありますでしょ。 「何やこのボールペン、書けたり、書けなかったりしよるわ!」と言った時、坂上さんが「黒澤さん、そのボールペンかしてみ~!」と言われたので渡したら、「これはな、こうすると、直るときがあるんや」と言って、ペン先をインクの棒から外して、名前を書いてるバッチの安全ピンで、自分の手をインクで真っ黒にしながらガリガリとペン先をこすってくれました。



正直、「そんなんで、直るわけないやろ」と思って見てたら、「よし、これでかける書ける場合があるから、書いてみ」と言うので書いたら、直ったんですよ!!! それからです、坂上さんを見る目が変わって話をするようになって、喋ったら、面白いのなんのって、もう滅茶苦茶仲良くなりました!!! ずっと坂上さんと喋りっぱなしです。
坂上さんは、大阪の西成のドヤに住んでいて、顔は、真っ黒けで、イカツイゴリラのような顔しています。
よーちん「坂上さんは、覚せい剤はやったことあるの?」
坂上さん「ワシか~!ワシはな~、一回だけやったことあるぞ」
よーちん「どうやった?良かった?」
坂上さん「あれはあかん!酒飲んで、友達に勧められて打ったら、頭おかしくなって、警察に飛び込んだんや」
よーちん「西成警察かいな?何て言うて飛び込んだん?」
坂上さん「警察にやな、今ワシ覚せい剤打ったから、自首しに来たって言うたら、警察が、覚せい剤打った~!ちょと待っとけ言うから、待ってたら、お前の前科調べたら、覚せい剤の前科なんか、ないやないか~!! それにしては、お前酒臭いな! ここは、お前みたいな酔っ払いが来るとこと違うんや~!帰れ~」って帰らされたみたいです!!
その話聞いたら、笑いました!自首して来た人間を追い返すなんて、どんなんやねん!!!
流石、西成やな~!!! 知らない人もいると思いますが、路上で平気で覚せい剤売ったり、西成警察の前で、博打してたり、当時は何でもありの場所でした!!
でも、坂上さんって、よくよく考えると常識のある人で、初めに、「掃除は、ワシがやるから、気にせんといてな」の言葉、刑務所では、個性の強い人間の集まりやから、ちゃんと初めに断って、揉めたりせんように、自主的に掃除してくれたんだな~と思いますわ!!

人は、第一印象が、何やこいつとか、嫌いやな~と思った人ほど、凄く仲良くなるもんですね~!段々付き合っていく内に、悪い所からスタートしてるから良いところが見えてきます!逆に、第一印象の良い奴ほど、仲が悪くなったりする場合が、自分にはありました! 今日もお疲れさまです!